tabira田平紀男『日本の漁業権制度―共同漁業権の入会権的性質』(法律文化社、2014年)

 本書のいくつかの論旨を紹介する。

 日本の漁業権制度は、長い歴史の中で形成されたすぐれた制度である。共同漁業権による沿岸漁業管理は、海外からも注目されている。本書は、共同漁業権の入会権的性質を中心として、日本の漁業権制度の特徴を明らかにすることを目的とする。

 沿岸地先水面の小規模漁業における漁業権を、伝統的漁業集落を基礎にする漁民集団が有するとき、その漁民集団は資源の保存と管理に積極的となり、漁民の漁業所得確保につながるので、有効な漁業管理がなされることになる。この漁業権は、わが国の漁業法における漁業協同組合等の、いわゆる組合管理漁業権(共同漁業権、特定区画漁業権および入漁権)として見事に具体化されている。わが国におけるこの漁民集団は、組合管理漁業権による漁業の漁業管理においてのみでなく、経営者免許(自営)漁業権(定置漁業権、一般の区画漁業権)による漁業や沖合の許可漁業の漁業管理においても、重要な役割を果たしている。これらのことが、共同漁業権を中心とする日本の漁業権制度の特徴であり、特長でもある。

 本書では、上述の漁民集団を漁業入会団体と呼んでいる。立法により漁業入会は共同漁業権等として構成され、共同漁業権等の権利主体は漁業協同組合等とされた。そのため、共同漁業権は入会権的性質をそなえている。

 漁民の人権としての財産権は、いわば生存権的財産権であり、その保障は、組合管理漁業権などの漁業権によって具体化されている。しかも、まさにこのような漁業権によって、沿岸漁場の総合的な利用を図れるのである。漁業権制度は合理的な規制であり、緩和されるべきではない。(N.T.)

田平紀男『日本の漁業権制度-共同漁業権の入会権的性質』(法律文化社、2014年)
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[2014年4月16日掲載]