abekaiken2小沢隆一・榊原秀訓編著『安倍改憲と自治体 -人権保障・民主主義縮減への対抗』(自治体問題研究所、2014年)

第二次安倍政権の下で、日本国憲法は、「最大の危機」を迎えている。これが本書の基本認識である。

第二次安倍政権においては、「明文改憲」と共に、「集団的自衛権の行使」を内閣による憲法解釈の変更によって可能とするかなりグロテスクな改憲策動も進行している。これは、選挙で選ばれた多数派が歯止めなく活動することを要求する「選挙独裁」の究極の姿であり、立憲主義の考えとは相容れない。人事を通した施策の変更もこの延長線上にある。さらに、法律制定や法律改正の形で、日本国憲法のめざす国家・社会のあり方を変質させるという意味において「改憲実態」とでも称しうる改憲策動もある。本書では、このような「改憲実態」を主な対象としつつ、広義の改憲策動を対象としている。

改憲策動として、平和主義を覆すだけではなく、国民から隠れて秘密裏に活動するための秘密保護制度を整備し、国や自治体の組織、公務員制度といった統治構造を改編し、第一次安倍政権における「新自由主義」に基づく構造改革や保守主義的な施策を復活、強化している。
   例えば、「国家戦略特区」によって、従来の「規制緩和」では突破できない権利保障と結びつく規制も打ち破ろうとする。「世界で最も企業が活動し易い」国づくりとして、「世界で最も労働者が保護され難い」労働法制を目指し、社会保障改革によって、国・自治体の責任を縮小し、企業や市場の活動に依拠する。教育や農業の領域においては、教育委員会や農業委員会といった自治体の行政委員会を見直し、首長権限を強化したり、企業参入を促進しようとする。こういった人権保障・民主主義の縮減の現状を理解し、憲法の理念からの批判と対抗がぜひとも必要である。

第一次安倍政権における改憲策動は、国民からの反撃で頓挫した。国会で多数を占めているからといって、第二次安倍政権が目論む改憲策動も容易に実現できるわけではない。歴史が繰り返すところを目の当たりにしたいと思っている。         (榊原秀訓)

小沢隆一・榊原秀訓編著『安倍改憲と自治体-人権保障・民主主義縮減への対抗』
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(2014年6月1日掲載)

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