nishitanikoki2 西谷古稀(下)『労働法と現代法の理論<上巻・下巻>』西谷敏先生古稀記念論集(日本評論社、2013年)

本書は、西谷敏教授の古稀を記念し出版された。西谷教授の広い学問交流を反映して、労働法学のみならず、憲法や民法など公法学・私法学さらには基礎法学分野等における代表的な法学研究者からなる執筆者は、総勢四三名におよび、現在時点における労働法・現代法の最先端の研究成果がここに集約されている。

全体は四部構成からなっている。総論・現代法を扱う第一部では、労働契約における「意思」を論じた吉村論文を皮切りに、雇用保障・生活保障と労働法、労働条件決定システム、労働権、自己決定や良心の自由、公務労働など、労働法と現代法に関わる原理的・基本的な問題が論じられている。

「労働法における個人と集団」をどう考えるのかは、西谷理論における中心的なテーマであり、それは同時に、近現代の労働法とその学におけるいわば「原問題」でもある。第二部と第三部は、それぞれ「労働法と個人」「労働法と集団」とタイトルされ、個別的労働関係法分野と集団的労働関係法分野におけるアクチャルな重要論点が各テーマのスペシャリストにより論じられる。第二部では、労働者性、労働条件の不利益変更、採用法理、ハラスメント、有期雇用などの非正規雇用、ジェンダー問題、解雇法理など、労働法学上の最重要テーマが議論されている。第三部では、集団法の基礎理論や方法論、協約の法的性質、団体交渉の基礎理論など、刺激に満ちた議論が展開されている。

第四部は、比較法・外国労働法の成果が収められている。西谷先生が専門とされるドイツ法のみならず、イギリス、フランス、アメリカ、ロシア、さらにアジア(タイ)にまで及ぶ比較法・外国法研究の一大パノラマが、労働法分野のみならず、憲法学、法史学、国際法学分野にわたって繰り広げられており圧巻である。(y)

[2014年1月7日]

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根本到/奥田香子/緒方桂子/米津孝司編『労働法と現代法の理論<上巻>』(日本評論社、2013年)
『労働法と現代法の理論<下巻>』(日本評論社、2013年)