nihonkoyo2西谷敏ほか著『日本の雇用が危ない-安倍政権「労働規制緩和」批判』(旬報社、2014年)

2013年初頭より、「世界で一番企業が活動しやすい国をつくる」とのキャッチフレーズのもと、規制緩和の重要な柱としての労働規制緩和政策が総合的重層的に展開された。こうした状況に応え、『日本の雇用が危ない 安倍政権「労働規制緩和」批判』(旬報社、2014年3月)が刊行された。本書は、以下の内容で構成されている。

①西谷敏「全面的な規制緩和攻勢と労働法の危機」、②五十嵐仁「第二次安倍内閣がめざす労働の規制緩和」、③和田肇「質の悪い雇用を生み出すアベノミクスの雇用改革」、④田端博邦「産業競争力会議ペーパー批判」、⑤野田進「限定正社員の法的位置づけ」、⑥萬井隆令「労働法理への叛旗」、⑦脇田滋「『ブラック企業型労使関係』ではなく、働く者に優しい労働政策を!」、⑧深谷信夫「自由な企業活動と日本国憲法の原理」、⑨深谷信夫「安倍労働規制改革 政策決定糧の記録」、⑩規制改革関係資料。

このように、「本書一冊で安倍政権の労働規制緩和の全体像が把握できるように作られている」(西谷「はしがき」)。だから、「ともかく本書を読んでほしい。そして、『アベノミクス』、『競争力強化』、『経済成長』の名のもとにどのような事態が進行しようとしているのか知ってほしい。そのうえで、それをどのように判断しどのように行動するかは、まさに労働者・労働組合自身の問題であり、労働に関心をもつ人びとの問題である。」(同前)。

以上に尽きるのだが、一言。

働く人びとの、それはほぼすべての国民であるが、労働の場が根底から壊されようとしている。2014年も、労働規制緩和政策は、より具体的に、展開されている。キャッチフレーズこそ、「働く人と企業にとって世界でトップレベルの活動しやすい環境の実現」と微温化された。しかし、現実には、「解雇特区」の再登場と、「残業代ゼロ」と批判される労働時間規制の緩和などである。

この現状を、理論的な問題も含めて、明らかにすることは、最初の一歩である。安倍労働規制緩和を批判し続けなければならない。しかし、批判だけでは、建設への道は拓けない。本書の先に、なにを提起するかが、残された最大の課題である。どういう労働の世界を創造するのか。『里山資本主義』(角川書店)が描き出す新しい日本の姿のように、マネー資本主義と決別した労働の世界を描くのか、である。     (ふかや・のぶお)

西谷敏・五十嵐仁・和田肇・田端博邦・野田進・萬井隆令・脇田滋・深谷信夫著『日本の雇用が危ない-安倍政権「労働規制緩和」批判』(旬報社、2014年)
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[2014年6月1日掲載]

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