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『自治体行政システムの転換と法』(日本評論社、2014年)

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mitsuhashi1三橋良士明・村上博・榊原秀訓編著『自治体行政システムの転換と法 -地域主権改革から再度の地方分権改革へ』(日本評論社、2014年)

本書は、自治労連・地方自治問題研究機構の地方分権研究会に参加する憲法・行政法研究者の研究成果の一部である。同研究機構は、いわゆる「地方分権改革」の「成果」のひとつとされる1999年地方自治法大改正の年に設立され、この間の「地方分権改革」および「地域主権改革」等の諸相を批判的に分析・検討し、自治と分権にかかる理論的・実践的問題の解明を続けてきた。本書の内容については、編者・村上の「はしがき」の案内が簡にして要を得ており、まずは読者の興味・関心に即した論文を発見、そして精読してほしい。

さて、1993年の衆参両院の地方分権推進決議から数えると、「地方分権改革」はすでに20年を経過する。そのためか、内閣府・地方分権改革有識者会議が、「個性を活かし自立した地方をつくる~地方分権改革の総括と展望(中間取りまとめ)~」(2013年12月10日)を提出したり、総務省の実質的機関誌である「地方自治」では、巻頭座談会「地方分権の20年を振り返って」の連載が2014年2月号から始まっていたり、当時の地方分権推進組織の中核的メンバー等による「回顧」があちらこちらで盛んである。ところが、いったいこれまでの「地方分権改革」が、いかなる意味で憲法が保障するところの地方自治を具体化することになったのかは一向に不明である。この意味で本書は、このような視点からの分析・検討であることが一貫しており、たいへん時宜を得た出版である。

これにかかわって、地方分権改革有識者会議が「地方分権改革の総括と展望」を語るまさにそのとき、「中央公論」2013年12月号の特集「壊死する地方都市」が、2040年の日本では、もっぱら人口減少を原因として地方都市が消滅し、「極点社会」となるという警告を行っていることは見逃せない。自公政権と民主党政権の政権交代をまたいで、20年にわたって議論され、実践されてきた「地方分権改革」の結果が、地方都市の「壊死」とは愕然とさせられるではないか。しかも著者は、元岩手県知事・元総務大臣まで務めた「地方分権改革」論者の増田寛也であることに衝撃を受ける。なによりも、地方分権推進の中心にいた彼らが、いまになって「地方都市が壊死する」と、地方の「壊死」を自動詞で語る無責任さに耐えられない。地方都市は「壊死する」わけではなく、中央政府の自治・分権政策の失敗によって「壊死させられる」のだという認識がまったくないのに驚く。増田を含めた当時の地方分権推進組織のメンバーには、そもそも「総括と展望」の資格はあるのだろうか。

本書は、「地方分権改革」のなかの自治体行政システムの転換をテーマに、もっぱら憲法・行政法学の視点からではあるが、主要行政領域の諸問題を具体的・批判的に分析・検討するものであり、地方分権推進組織の中核的メンバーによる「総括と展望」とはひと味もふた味も違ったものである。どうぞ十分に吟味・堪能していただきたい。そして、「人口減少社会」の脅威に屈しない憲法の地方自治保障法論の構築、あるいは地方自治領域だけではなく、あらゆる「潰憲」策動に抗う理論的滋養にしてほしいものである。   (白藤博行)

三橋良士明・村上博・榊原秀訓編著『自治体行政システムの転換と法』(日本評論社、2014年)
(クリックすると、日本評論社のHPにリンクします)

[2014年5月7日掲載]

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