安保関連法案(戦争法案)に反対し、そのすみやかな廃案を求める
研究団体共同アピール

安倍晋三内閣は、2015 年5 月14 日、多くの人々の反対の声を押し切って、自衛隊法など既存10 法を一括して改正する「平和安全法制整備法案」と新設の「国際平和支援法案」を閣議決定し、15 日に国会に上程し、現在国会で審議がすすめられている。

この二つの法案は、これまで政府が憲法9 条の下では違憲としてきた集団的自衛権の行使を可能とし、米国などの軍隊による様々な場合での武力行使に、自衛隊が地理的限定なく緊密に協力するなど、憲法9 条が定めた戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認の体制を根底からくつがえすものである。その内実は「平和安全」、「平和支援」と呼べるものではなく、以下のような点から「戦争法案」と呼ぶにふさわしいものである。

1. 法案策定までの手続の重大問題

昨年7 月1 日の閣議決定は、「集団的自衛権の行使は憲法違反」という60 年以上にわたって積み重ねられてきた政府解釈を、国会での審議、国民的議論にも付さずに、一内閣の判断でくつがえしてしまう暴挙であった。安倍内閣は、本年4 月27 日に、現行安保条約の枠組みさえも超える「グローバルな日米同盟」をうたう新たな「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)を米政府と取り交わし、さらに4 月29 日には、安倍首相が、米国上下両院議員の前での演説の中で、法案の「この夏までの成立」を「約束」した。こうした一連の政治手法は、国民主権を踏みにじり、「国権の最高機関」たる国会の審議をないがしろにするものであり、憲法に基づく政治、立憲主義をわきまえないものである。

2. 歯止めのない集団的自衛権行使

自衛隊法と武力攻撃事態法の改正は、「存立危機事態」において自衛隊による武力の行使を規定するが、そのなかでの「我が国と密接な関係にある他国」、「存立危機武力攻撃」、この攻撃を「排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使」などの概念は極めて漠然としている。これは、歯止めのない集団的自衛権行使に道を開き、憲法9 条に明白に違反するものである。その際の対処措置を、国だけでなく地方公共団体や指定公共機関にも課すことも重大問題である。

3. 米軍等に対し地球のどこでも戦争協力

他国軍隊に対する自衛隊の支援活動としての、重要影響事態法案における「後方支援活動」と国際平和支援法案における「協力支援活動」は、いずれも、活動領域について地理的な限定がなく、「現に戦闘行為が行われている現場」以外のどこでも行われ、従来は禁じられていた「弾薬の提供」も可能にするなど、自衛隊が戦闘現場近くで外国の軍隊に緊密に協力して支援活動を行うことになる。これは、もはや「外国の武力行使とは一体化しない」という言い逃れは不能であり、そこでの自衛隊の支援活動は憲法9 条1 項が禁ずる「武力の行使」に該当することになる。そのような危険な活動に自衛隊を送り出すことは、政治の責任の放棄のそしりを免れない。

4. 平時から米軍等と「同盟軍」的関係を構築

自衛隊法改正案は、「自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している」米軍等の武器等防護のために自衛隊に武器の使用を認める規定を盛り込んでいるが、こうした規定は、自衛隊が米軍等と警戒監視活動や軍事演習などで平時から事実上の「同盟軍」的な行動をとることを想定するものである。このような活動は、周辺諸国との軍事的緊張を高め、偶発的な武力紛争を誘発しかねず、武力の行使までエスカレートする危険をはらむ。領域をめぐる紛争や海洋の安全の確保は、本来平和的な外交交渉や警察的活動で対応すべきものであり、それこそが、憲法9 条の平和主義に合致する。

研究教育の営みは平和と民主主義を基盤にして成り立つことを深く自覚しつつ、それぞれの活動をすすめてきた私たち研究団体は、以上の理由から、現在、国会で審議されている「戦争法案」に反対し、そのすみやかな廃案を求めるものである。また、このような重大な問題をはらむ法案の拙速な審議と採決を断じて行わぬこともあわせて求める。

2015 年6 月24 日

賛同団体名

新日本医師協会

新薬学研究技術者集団

地学団体研究会

日本医療総合研究所

日本科学者会議

日本科学者会議東京支部

民主教育研究所

文学教育研究者集団

民主主義科学者協会法律部会

唯物論研究協会

歴史科学協議会

歴史教育者協議会

東京歴史学研究会

歴史学研究会

(以上14団体 2015年6月22日現在)