橋下ポピュリズムと民主主義

浦田一郎・白藤博行編『橋下ポピュリズムと民主主義』(自治体研究社、2012年)

目次

白藤博行「ディーセント・デモクラシーの事始め」
小松浩「憲法が求める民主主義のあり方」
榊原秀訓「『自治体ポピュリズム』を超える自治体民主主義のあり方」
市川須美子「教育と自治体民主主義」
西谷敏「自治体民主主義と職員・労働組合」
浦田一郎「橋下市長の『民主主義』的改憲論」

2012年7月1日大阪で民主主義科学者協会法律部会(略称、民科法律部会)主催によりシンポジウム「市民と一緒に大阪から民主主義のあり方を考える」が開かれた。橋下徹大阪市長によって自治体民主主義、教育、公務員労働者などに対する攻撃が民主主義の名のもとに行なわれている。これは民主主義法学の理念を掲げる民科法律部会が取り上げるべき問題だと考えられ、本シンポジウムがもたれた。

 本書は、シンポジウムにおける報告を執筆時点の考察を加えたうえで収め、また新たに白藤博行論文と浦田一郎論文が加えられたものである。シンポジウム自体、「市民と一緒に大阪から民主主義のあり方を考える」というテーマが掲げられたように、大阪における問題を元にしながら、それをきっかけにして民主主義一般のありかたを考える視点をもっていた。自治体民主主義と民主主義一般の関係のとらえかたについて執筆者のあいだにニュアンスはあるが、共通して後者に対する関心ももたれている。

橋下大阪市長が石原慎太郎議員とともに共同代表を務める「日本維新の会」は、国政に進出し一定の政治的力を有している。本書によって、改めて橋下大阪市長の民主主義論を検討する意義がある