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瀬木比呂志『絶望の裁判所』(講談社現代新書、2014年)

seki2瀬木比呂志『絶望の裁判所』(講談社現代新書、2014年)                 

話題の書である。
   著者は1954年生、東大法学部卒後、79年から東京地裁・最高裁等に裁判官として33年勤務した。米国に留学し、研究・執筆(「民事保全法」<初版01年・第4版=14年刊行予定、日本評論社>等多数)等を行っていたが、12年に明治大法科大学院専任教授に転身した。①「研究、教育、執筆に専念し…人にはない代替性のない仕事をしたい」、②「裁判所にも、裁判官のマジョリティにも、ほとほと愛想が尽きた」、からであった。94年からの最高裁勤務後に体調を崩した後に再度体調を崩した結果の転身であった。
本書の内容は、33年の裁判官生活を踏まえた、最高裁事務総局・裁判官キャリアシステムへの痛烈な批判と、司法改革で実現されなかった法曹一元制度への期待・提言である。

実名は出ないが実在の裁判官の驚くべき発言・エピソード等や、裁判所外では通用しない閉鎖的システムや人事ヒエラルヒーの体系が紹介され、結局、筆者によれば、日本の裁判所は、日本列島に散らばる「精神的な収容所群島」である。

筆者は那覇地裁で嘉手納基地騒音訴訟を担当し、94年2月、米軍の飛行は被告国の支配の及ばない「第三者の行為」だから、原告の「主張自体失当」とする判決を出した。これは、前年93年2月の厚木基地訴訟最高裁判決に従ったもので、筆者を含む裁判官らは「重大な健康被害が生じた場合には差止めも認め」る予定だったが、結局、同最高裁判決の通りに変更した。筆者は、那覇地裁判決は自分の心に「トゲのように突き刺ささ」り、本格的な研究に取り組む契機となった、と言う。現在では、筆者は、同最高裁判決は「木で鼻をくくったような内容」だと指摘している(本書127頁)。

本書には、リアリティと批判精神が満ちており、一気に読まされてしまう。  (神戸秀彦 関西学院大学 民法・環境法)

瀬木比呂志『絶望の裁判所』(講談社現代新書、2014年)
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[2014年6月1日 掲載]